COVID-19の不安をスティグマに変えないために

今回は、COVID-19感染症で問題となっている偏見・スティグマについてお話しさせていただきます。スティグマとは他者や社会集団によって個人に押し付けられたネガティブな意味のレッテルのことです。COVID-19感染症の場合、当事者やその家族・関係者だけでなく、感染症対策に関わっている人への偏見・スティグマも問題となっています。偏見・スティグマに晒(さら)されることは、場合によっては感染以上にその人を苦しめてしまいます。

COVID-19感染症に関連したスティグマの3つの要因

① COVID-19感染症は未だ不明な点が多い病気であること
② 元来、私たちは未知のものを恐れるものであること
③ その恐怖を他者と関連付けるのは容易であること
これらの要因から、本来の敵は見えないウイルスであるはずなのに、特定の対象を見える敵とみなして、嫌悪して遠ざけ、一時的な安心感を得ようとすることで、スティグマが生まれてしまいます。 (パブリック・スティグマ)

スティグマに晒された当事者におきる2つの問題

①「自分が悪かったのではないか」と強い罪の意識が生じ、その人のメンタルヘルスに重大な影響を与えてしまう(セルフ・スティグマ)
②スティグマを恐れ、必要な検査や治療を受けなくなってしまう、あるいは申告しなくなってしまう(感染の拡大に繋がってしまう)

スティグマへの防止と対応

①正しい情報を収集し、差別的な言動に同調しないようにしましょう。
②当事者やその家族は心理的にも社会的にも孤立しがちです。しっかりとコミュニティに迎え入れましょう。
③当事者の話を聞いてみましょう。感染経路が分かるとネガティブな感情を持つこともあるかもしれませんが、非難するより、話を聞く方がよほど自分の感染予防にも有益です。
④私たちが誰でも直面する悩み(スティグマを含むストレス要因)について、1人で抱え込まずに、周囲の人たちと率直に話し合ってみましょう(近い人に話しにくい場合は、相談窓口などを利用しましょう)。他者と話すことが積極的な対処や精神的な健康を促進してくれます。
⑤COVID-19感染症が蔓延している今、誰でも感染者となりえます。私たちの敵は感染者ではなく、ウイルスそのものであることを忘れないようにしましょう。