森田療法を希望していらっしゃる患者さんの中には「森田療法は薬を使わない治療と思ったから」とおっしゃる方が多いです。では森田療法の創設者・森田正馬は薬物療法をどのようにとらえていたのでしょうか。森田先生は「神経質に対する薬物療法は、単に他療法の補助もしくは症候療法に過ぎない」と述べつつも、「凡そ薬というものは一方には毒である。病に適するとき、初めて薬となり、適応せざる時は毒となるのである」とも述べています。つまり森田先生は神経質に対する薬物療法について最初から否定するのではなく、薬も使用していたことがわかります。森田先生の時代に存在した薬剤は神経質に対して有効でなかったので森田療法の中に薬物療法を組み込むことはありませんでした。しかし現代に森田先生が生きていてたらおそらくSSRI(選択的セロトニン取り込み阻害剤)などを使用したのではないかと推測します。特に強迫症やうつ病の方には薬物療法を併用することがほとんどといってよいと思います。それに比べて強迫症の中でも不完全恐怖の方や、社交不安症(対人恐怖症)の方には無投薬で森田療法を実施することも多々あります。病気の種類や病態によって我々は薬物療法の併用を考慮しております。ただ薬物療法はあくまで症状を軽くするための補助的手段として位置づけます。森田療法を始める際、今までの薬の効果など担当の先生とよくはなしあってみてはいかがでしょうか。