パニック症(パニック障害)・広場恐怖症(広場恐怖)

パニック症(パニック障害)・広場恐怖症(広場恐怖)

パニック症(パニック障害)は予期しないパニック発作を繰り返すものです。パニック発作とは「突然、激しい恐怖または強烈な不快感の高まりが数分以内でピークに達し、その時間内に以下の症状のうち4つまたはそれ以上が起こる」とされます。

  • 動機、心悸亢進、または心拍数の増加
  • 発汗
  • 身震いまたは震え、
  • 息切れ感または息苦しさ
  • 窒息感
  • 胸痛または胸部の不快感
  • 嘔気または腹部の不快感
  • めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
  • 寒気または熱感
  • 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  • 現実感消失(現実ではない感じ)または離人感(自分自身から離脱している)
  • 抑制力を失うまたは
  • 死ぬことに対する恐怖

さらに「さらなるパニック発作またはその結果について、持続的な懸念または心配や発作に関連した行動の意味のある不適応変化(例:運動や不慣れな状況を回避するといった、パニック発作を避けるような行動)を1つ以上、1ヶ月以上続いているもので、社交不安症(社交不安障害)や限局性恐怖症、強迫症(強迫性障害)、心的外傷後ストレス障害のような他の疾患によってうまく説明されないもの」と定義されています。

また、広場恐怖症(広場恐怖)はパニック発作が出た時に、逃げられない状況や、恥をかきそうな状況にいることに対する恐怖のことです。頻繁に続くと、公共交通機関や人前に出ることを避けるようになり、日常生活にも支障がでます。一般的にはパニック発作を伴うことが多いですが、伴わない場合もあります。

現在のパニック症(パニック障害)を、森田正馬は神経症の一つのタイプとして「発作性神経症」と呼んでいました。その症例のなかには、1915年にただ一回の面接によって治癒に導かれた「三十歳農夫」の記録も残っています。

森田療法においてはパニック発作そのものに治療の焦点を置くことはしません。症状は身体的疾患によるものではないことを保証し、精神交互作用などを用いて症状の仕組みを説明したうえで、その人が恐怖や不安から逃げずに体験することを通して、どう受け止めどう付き合っていくのかに焦点を合わせていきます。

【患者さんの声】 Aさん 20代 女性 会社員

イラスト私は、割とキャリアウーマンといった感じで、仕事も人一倍頑張っていました。余暇も習い事に通ったり、友達とショッピングに出かけたりと忙しい毎日。とても充実した日々を送っていました。

そんなある朝、通勤で乗った満員電車が停止信号で一時停車したとき、突然動悸が。息苦しくて、汗をかき、めまいがしました。ついには、床にうずくまってしまいました。

結局、その日は会社を早退。病院で診察を受けることにしました。病院では、「身体には異常がない」という診断だったので、一旦は安堵しましたが、漠然と不安な気持ちは拭えずにいました。

その一週間後の夜、今度は自宅で布団に入って間もなく、同じような動悸に襲われたのです。「このまま死んでしまうのではないか?」という恐怖を感じました。

同じような症状が出たらどうしよう・・・と考えると、不安で、怖くて。ついには、誰か一緒でないと外出することもできなくなり、3ヵ月後には仕事を辞めざるを得えなくなりました。家の近くの心療内科のクリニックに通うことにしましたが、半年ほど経っても一向に外出できるようにならない状態でした。診療も薬もあまり効果を感じることはできません。

そこで、自分でインターネットで調べて、森田療法センターを知り、受診してみることにしました。
診察の結果、入院治療を進められました。家族と離れての生活はとても不安に感じたのを覚えています。
でも、「また友達と出歩きたい」「仕事をしたい」という思いで頑張ることを決心し、入院に踏み切りました。

第Ⅰ期 臥褥期、第Ⅱ期 軽作業期を経て、第Ⅲ期 作業期に入ったばかりの頃は、与えられた作業に真面目に取り組みながらも、症状が出てくることを恐れ、暑い夏の外での作業を避けていました。

そんなある日、病棟で飼っている犬が食事を吐いてしましたのです。
私もスタッフもとても驚きました。どうしたものかと考えていましたが、医師やスタッフの後押しもあり、私一人で翌日、動物病院に連れて行くことになりました。動物病院に行くには、電車に乗らなくてはいけません。一人で電車に乗る・・・前夜は不安で堪りませんでした。看護師にも不安を訴えました。

イラストそんな中、当日の朝が訪れてしまいした。不安で一杯でしたが、看護師に背中を押され、勇気を出し、力を振り絞り、出かけることにしました。

結局、一人で電車に乗れることもでき、犬の診察も済ますことができました。無事に病院へ帰ったときには誇らしい気持ちが湧いてきました。それからは、自信も出てきて、戸外での作業にも自ら取り組めるようになったのです。

振り返ると「症状にも原因があったけれど、それ以上に自分で行動を制限していたところがあった。今はやりたいことがやれて楽しい」、そんな前向きな気持ちで、不安に圧倒されがちだった自分と向き合うことができました。