椎茸

それは、いつの間にか生えていました。

庭のすみ、松の樹と建物とに挟まれた薄暗いところに、椎茸のホダ場があります。
見た目はただ、「朽ちた丸太が組んである」だけなので、あまり気にかけないでいたのですが。
ある日、他のスタッフが「椎茸生えてましたよー」と取ってきてくれたのです。

それにしても、でかい。
手のひらからはみ出しそうなくらいです。
そしてとてもおいしそうです。さっそくいただきましょう。

トースターで焼いて、先日作った(作り過ぎた)柚子醤油をかけて、いただきます!
うんうん、しいたけおいしい!
やわらかな歯触りとしっかりとした旨味。
口の中に、色鮮やかな紅葉が広がるようです。

と、ちょうどそこにやってきた別のスタッフから、こんなアドバイスがありました。
「もっと笠が開ききる前に収穫した方がおいしいよ」
ほーう。それは、それは。百聞は一食に如かず(?)ですね!
ぜひとも味わってみたい!

それからと言うもの、通りかかるたびに原木の周りをうろうろするようになりました。
冬眠前の獣たちも、きっと、こんな気持ちなのでしょう。

あ、赤ちゃん椎茸発見。

これからが楽しみです。

数日後。

おおっ、急にでっかくなりました!(※上の赤ちゃんとは別の子です)
これは、タイミング良く収穫するのには、けっこうコツが要りそうです!

慌てて収穫して、ホイルにのっけてトースターへ!

改めて見ると、上下逆です!
チーン!
…いただきます!

!!
…椎茸出汁だ!
噛みしめるほどに、椎茸の旨みがじゅわっと溢れ出してきて、口の中に広がります。
とってもジューシー!
この前食べたのが一面の紅葉だとすれば、その背景に白絹を垂らしたような滝が加わった感じでしょうか!?
タイミングよく収穫すれば、原木栽培の椎茸はこんなにもおいしいのか!

「啐啄同時」という禅語があります。
師弟関係や教育の場面でよく使われる言葉ですが、生命を育むという点では通底するものがあるのかもしれません。
見た目が変わりなくてもじつは変化していたりするし、成長の早さも一定ではない。それは数字や言葉だけではとても表せない、日々直に向き合っている人にしか伝わらない感覚なのでしょう。
…書いていてなんだか、日頃の行いを省みるところがありますが。
もっとよく耳をすませば、あるいは、コツコツ殻(樹皮)を破ろうとしている彼らの声を、聴くことすらできるのでしょうか。