茶碗蒸し

みなさん、お元気ですか?

…ない。

……ない。
椎茸が、ない。
いつも食べきれないほどにょきにょきくるのに、今回はぜんっぜん生えてこない!

コトの発端は、ひと月ほど前に遡ります。
例年のように庭のイチョウから銀杏を拾ってきて、下処理をしてテーブルに出してたのですが。

これが、とても不人気で。
一個も売れないときました。

銀杏。
おいしいんだけれど、たしかに、あまり単体で食べるものじゃありませんね。
クセのある苦味は、主役というより脇役として配されたときにこそ、光り輝くもの。
う〜ん…なにか、銀杏を活かした料理はできないものか。
あ、そうだ。
庭の椎茸も使って、茶碗蒸し作ろう!

…ていうわけなんです。
思いついたときは、いいアイデアだと思ったんですが。
待てども、待てども、一向に生えてこない。

一体、どうしたんだろう?
じつはこの夏、ホダ場のお引っ越しをしたので、そのせいで乾燥しているんじゃないかと思って、水をかけてみたり。
それから、インターネットで調べてみたところ「ハンマーで叩くと収穫量が増える」というおもしろい情報があったので、付け焼き刃で叩いてみたり。

コン、コン、コン。
椎茸さ〜ん、秋ですよ〜?
…………。
…寒風が身に沁みます。帰ろう。

そんなこんなで、時は過ぎ。
今年はだめかぁ…。
なんて、銀杏をつまみつつ、苦い顔をしていたある日のこと。

きたぁぁーー!!
しいたけぇぇ!!
硬い樹皮を破って、かわいらしい椎茸の子どもたちがコンニチハしているではありませんか!
い、いつの間に…。心の中で叫んじゃったじゃないか…。
いろいろと手を出しましたが、結局はただ、気を長くして待っていればよかったのかもしれません。
あせらずいこうよ、と、教えてもらったような気がしました。

さて。椎茸さえ手に入れば、もうこっちのもんです。

干し椎茸を作り、だしをとります。

つづいて、だしと卵液と塩を合わせ、器に注ぎます。
具はお待ちかねの銀杏と出がらしの椎茸です。
あとは、レンチンすれば…

できました〜〜!!

さっそく、いただきます。
…あつっ!
あ、でもうまい。
アツアツのしいたけだしが、冷えきった胃の腑に沁みわたる。
器の底に沈んだ銀杏が、ほくほくとして苦くて全体を引き締めてくれている。
一つの器にぎゅっとつまった庭の秋。堪能しました。

ちなみに上にのってるのは、みつ葉ではなく大根の葉っぱです。
見栄えはよくなりましたが、お味の方はふつうに葉っぱでした。
その後、庭の大根がどうなってしまったのかというお話は、長くなるのでまた今度。